
マッチャ山塊はアルタイ山脈、トルケスタン山脈、ザラフシャン山脈という3つの巨大な山脈の合流点である。これらの山脈は全てパミール・アライ山脈系に属している。
マッチャ峠の南西にはイグラ峰がある。この山はザラフシャン氷河の主たる流れを閉ざしており、まるでこの山塊の中心であるかのようである。イグラ峰は岩の多い尾根である。これは、1つの孤立した尖った峰というわけではなく、名称から想像されるようなものでもなく、いくつかの尖った峰が1つの山塊にまとめられている。
- 北峰 (4430 m) - パハールコワ夫人(Любовь Яковлевна Пахарькова、ソ連邦のアルピニズムにおけるスポーツマスター)の名に因む。
- 中峰 (4510 m) - セントラル・イグラ(Центральная Игла、中央の槍)
- 南西峰 (4530 m) - グラーヴナヤ・イグラ(Главная Игла、主峰)
マッチャ峠からのイグラ山塊の横断ルートのカテゴリーは5A(おおよそ ユー・マリーヒン(Ю. МАЛЫХИН) - リーダー、ア・ダヴィードフ(А. ДАВЫДОВ)、ル・エゴーロフ(Л. ЕГОРОВ)、エヌ・オルロフ(Н. ОРЛОВ))
1969年8月5日、マッチャ峠(標高3870 m)に設けられた出発点(штурмовой лагерь、襲撃キャンプ)より出発:
- 氷河を左側のカウンターフォースを避けて進み、ベルクシュルントに到達。
- ベルクシュルントより雪斜面を上り、雪の尾根に出て、これに沿って岩壁に至る。
- 12 mの裂け目を登攀して段丘に至る(岩は雪に覆われている)。
- 次に、裂け目のある内角(転石あり)を18 m上る(ピトン使用)。
その後、左側に寄りつつ200 mを、至るところに小さな壁や雪の島が見える岩斜面を上る。
右斜め上方へ80-100 m進み段丘に出る。段丘を10-15 m進み、次に帆のような形状の「ジャンダルム」を避けるため、その下のなだれ氷でできたクーロワールを10 m渡る。右側を斜めに進む狭い20 mの段丘を通って、頂上部の塔壁の下の尾根に出る(ピトン使用)。塔壁を80 mまっすぐ上って北峰(パハールコワ夫人峰)に至る。
頂上部の塔壁は大きなブロックで構成されており、剥離した岩や転石が多いので、大きな注意と慎重さが求められ、ピトンによるアイゼンザイルが必要である。
「ジャンダルム」前の低い鞍部に至るまで岩尾根を下る。その後、左の斜面(前進方向)を50 m下り、「ジャンダルム」を棚をたどって右側に迂回し、クーロワールの右側に出る。
クーロワールの右側の岩と氷の境を80 m上る。次に10 mを壁に沿って上り、10 mを氷のクーロワールを上って、「ジャンダルム」の後方の雪尾根に出る(ピトン使用)。
雪尾根を上り、雪斜面に変わってから30 m進んで岩場に至る(ピッケル、ピトン使用)。右斜め上方へ20 m、雪の島のある岩場を上り尾根に出る。
左へ10 m進み壁沿いに氷と岩の境をたどり、10 mを壁をまっすぐ上り、さらに10 mを雪に覆われた岩の尾根をたどる。
急な雪斜面20 m。3回に1回の動きで進み、ピッケルでのアイゼンザイルを行う。
その先は、大きなカーニスが左に見えるが、尾根の雪の急な部分を上る。
10 mの岩壁を上ってセントラル・イグラの頂上に至る。
尾根を下り、岩の難易度は中程度で、「ジャンダルム」は直接正面から攻める。
尾根を左へ15 m下って雪の緩斜面に出て、ベルクシュルントを渡り、グラーヴナヤ・イグラの頂上部の塔の麓に至る。
左側の尾根を30 m上り、次に裂け目を左斜め上方へ40 m上る。頂上部の塔の岩は瓦状構造になっており、転石が多い(ピトン使用)。
その後は簡単な岩尾根をたどって山頂(グラーヴナヤ・イグラ)に至る。
頂上から東方向へ下り、雪原を進んで、アライ山脈の鞍部「ヴォロータ」(ворота、門)に至る。その後、マーラヤ・イグラ(Малая Игла、小イグラ)の尾根を迂回し、「カルニーズ」(карниз、雪庇)峠を経てザラフシャン氷河に下り、氷河をたどってマッチャ峠に至る。1969年8月6日1時に出発点に帰還。
各区間の要約およびルート進行の概要は以下の表にまとめられている。
カテゴリーの難度を決定するにあたって、当グループは過去の第4、第5カテゴリーのルートでの経験を基に評価を行った。
このルートは技術的にアラ・アルチャの「コローナ」(Корона、冠)5Aカテゴリーの横断ルートよりも難しく長い。難度としては以下に類似している。
- クロップフ(Кропф)ルートによる東シュヘルダ(Восточную Шхельду) - 5Aカテゴリー
- ゴルベヴァ峠(перевала ГОЛУБЕВА)からのアディル・ス・バシ(Адыр-Су-баши) - 5Aカテゴリー

表
マッチャ峠からのイグラ山塊横断ルートの主要諸元
| 日付 | 経過区間 | 平均傾斜角度 | 高度差 | 地形の特徴 | 技術的難易度 | 安全確保の方法 | 出発時刻 | ビバーク開始時刻 | 進行時間 | 使用したピトン、スカロップ | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1日目 | R0–R1 | 20° | 70 m | マッチャ峠からベルクシュルントまでの雪斜面 | 簡単。同時移動。 | 6:00 | |||||
| R1–R2 | 35° | 40 m | ベルクシュルント後の雪斜面。 | 固い雪。 | |||||||
| R2–R3 | 35° | 80 m | 岩壁の下まで続く雪尾根。 | 中程度の難易度。 | ピッケルでのアイゼンザイル。 | ||||||
| R3–R4 | 65° | 30 m | 岩壁。下方に裂け目と段丘。内角に裂け目あり。岩は雪に覆われている。 | 難しい。 | ピトン使用。 | 5 | |||||
| R4–R5 | 45° | 260 m | 至るところに小さな岩壁、所々に雪の島やなだれ氷が見える岩斜面。 | 中程度の難易度。 | 突出部使用。 | 2 | |||||
| R5–R6 | 20° | 20 m | 「パールス」(Парус)と呼ばれる「ジャンダルム」を避けるため、クーロワールを渡り、再び0.5 m幅の雪に覆われた段丘をたどって尾根に出る。 | 中程度の難易度。順番に移動。 | 突出部とピトン使用。 | 2 | |||||
| R6–R7 | 60° | 60 m | イグラ山塊北峰(パハールコワ夫人峰)の頂上部の塔。岩は大きなブロックから成り、大きな注意と慎重さが求められる。 | 難しい。 | ピトンと突出部使用。 | 10:00 | 3 | ||||
| R7–R8 | 45° | -80 m | 鞍部まで岩尾根を下る。岩は大きなブロックから成り、転石が多く、大きな注意が求められる。 | 中程度の難易度。 | 突出部使用。 | 10:20 | |||||
| R8–R9 | 50° | -50 m | 「ジャンダルム」を避けるため鞍部から左(前進方向)に下り、棚をたどってクーロワールに出る。クーロワールを抜けると尾根に出る。 | 下りは直接進む。 | ピトン使用。 | 2 | |||||
| R9–R10 | 40° | 80 m | クーロワールの右側を、雪と岩の境をたどって上る。 | 中程度の難易度。順番に移動。 | ピッケルと突出部使用。 | ||||||
| R10–R11 | 60° | 10 m | 風化した岩と転石のある壁。 | 難しい。 | ピトン使用。 | 2 | |||||
| R11–R12 | 50° | 10 m | 氷斜面6 m。プレート4 m。尾根に出る。 | 難しい。 | ピトン使用。 | 1 | |||||
| R12–R13 | 45° | 30 m | 雪尾根から雪斜面に変わる。 | 固い雪。 | ピッケルとピトン使用。 | 1 | |||||
| R13–R14 | 40° | 20 m | 雪の島のある岩場。尾根に出る。 | 中程度の難易度。雪は浅く、その下は氷。 | 突出部使用。 | ||||||
| R14–R15 | 0° | 0 m | 壁沿いに左へ10 m。氷と岩の境をたどる。 | 小さな切れ目が多い。 | 突出部使用。 | ||||||
| R15–R16 | 40° | 10 m | 雪に覆われた岩の、左(前進方向)側の尾根。 | 中程度の難易度。 | 突出部使用。 | ||||||
| R16–R17 | 最大45° | 20 m | 急な雪斜面。 | 中程度より少し難しい。 | ピッケル使用。 | ||||||
| R17–R18 | 20° | 20 m | 雪尾根。左にカーニスあり。 | 大きな困難はない。 | ピッケル使用。 | ||||||
| R18–R19 | 60° | 10 m | セントラル・イグラの頂上へ出る岩壁。岩はモノリス。 | 複雑。 | ピトン使用。 | 17:00 | 1 | ||||
| R19–R20 | 30° | -70 m | グラーヴナヤ・イグラの鞍部まで、所々に雪のある岩尾根を下る。 | 中程度の難易度。 | 突出部とピッケル使用。 | 17:30 | |||||
| R20–R21 | 50° | 40 m | 段丘まで、左側の尾根を上る。岩は著しく風化している。 | 複雑。 | ピトン使用。 | 2 | |||||
| R21–R22 | 60° | 30 m | 段丘から左斜め上方へ、斜めの裂け目を上る。 | 複雑。 | ピトン使用。 | 3 | |||||
| R22–R23 | 30° | 30 m | 簡単な尾根。イグラ山塊南西峰(グラーヴナヤ・イグラ)に至る。 | 大きな困難はない。 | 20:00 | ||||||
| R23–R24 | グラジーリン(ГЛАДИЛИН)隊が通過したルートを辿って頂上を下る。 | 20:10 | 1969年10月6日1時に出発点に帰還。 | ||||||||
| 合計: | 20:00 |

北イグラ峰 4430 m(パハールコワ夫人峰)
コメント
コメントするにはログインしてください