
頂上報告:Двузубка山(4430m)
『столб』と西壁経由
グループメンバー:
- Ю. А. Логачёв КМС
- О. И. Шумилов КМС
- В. Н. Бочаров МС
- А. А. Потехин КМС
- Г. Г. Андреев КМС
- Ю. С. Емельяненко КМС
- В. П. Вейко КМС
ルートは、1969年7月30日~8月4日にかけての期間、Дугоба アルプホステル から出発して踏破された。
目次:
- ルートの全体的説明および評価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . I
- 区間ごとの傾斜度グラフ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
- 現地略図 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . II
- 区間ごとのルート説明 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12
- ルートの各区間写真 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20

写真1. Двузубка山 西壁全景。Калькуш峰より撮影。

写真2. 西壁下部 — 『столб』。壁下のキャンプ地から ледник Урталик を挟んで撮影。


写真3. 『столб』の壁。ルート直下から撮影。(4) が7月30日に到達した地点、+ は夜営地。


写真4. САГУルート (北西壁の5bルート) から見る 『столб』 上部。
Двузубка山 は、Дугоба アルプホステル があるエリアの、パミール・アライ山脈に位置している。この山は、当地で最も高い山のひとつである САГУ (4670m) から北に伸びる尾根上にあり、この尾根は ущ. Ак-Таш と ущ. Улитор を隔てている。Двузубка山 の標高は4430m。САГУ – Двузубка山 の稜線の西壁は、アルピニストから見て非常に興味深い。壁の傾斜は、САГУ で60°、Двузубка山 に至っては80°に達する。САГУ の西壁には既に5bのルートが踏破されている。
Двузубка山 の右の『зуб』の真下には、高さ500m超の巨大な岩塊 — 『столб』— が聳えている。平均傾斜は80°に及ぶ。『столб』下部には張り出した箇所が多数あり、垂直な箇所は言うに及ばない。中間部での傾斜は80°程度、上部は垂直な箇所と、通称ポルチエット (polcetti) と呼ばれる、平棚と言えるか微妙な箇所を抜ける複雑な迂回を強いられる。
西壁全体と比べると、『столб』の岩質は強固で、赤みを帯びているのが特徴的である。『столб』と壁本体は、長さ40m程の細い尾根でつながっている。『столб』より上の西壁はさらに脆くなっている。壁上部の高さは600m程で、平均傾斜は60°である。最も傾斜がきついのは下部で、少なくとも70°はある。上部は一連の急登となり、頂上部の塔の手前100mの稜線に至る。下記の詳細な記述を参照のこと。
『столб』と西壁を初めて踏破しようとしたのは、1969年のタシュケント市『スパルタク』サークルのグループだった。しかしながら、100m程進んだところで、このグループは登頂を断念している。
『столб』下部は、大量のスペシャルギアを必要とすることに留意すべきである。
* 木製のくさび
* シュラムブール・ピトンなど
1968年、このルートへのアプローチを偵察することで登攀の準備を始め、7月いっぱいをかけてルートを観察した。その結果、このルートは、西壁上部中央の250m程の区間 (グラフおよび説明文参照) を除けば、落石のおそれが少ないことが確認された。夜営に適した箇所は、『столб』通過後の尾根上に一点のみ。
1969年7月30日~8月4日にかけて、前述のメンバー7名にて踏破された。リーダーは Ю. А. Логачёв КМС。
アルプホステルからルートへのアプローチにそれほど時間を取られなかったので、7月30日には壁への加工を開始、150m程を処理した。クライミングの難度は高く、場所によってはハードそのもの。岩そのものは不安定ではないものの、ピトンを打てるようなひび割れがどこにでもあるわけではない。結果として、ピトンを複数本打ち込むことも少なくなかった。また、岩壁はモノリスであるため、打撃箇所と岩の特徴がマッチせず、非常に不利な状況を強いられた。7月30日の作業時間は、壁上で6時間。
7月31日は、前日に設置したペリカムに沿って150m程進んだ。最も困難な箇所ではザイルをたぐり寄せながらの登攀となった (説明文参照)。13時間の作業時間で、なんとか140m進んだに留まる。これは、シュラムブール・ピトンを使用する極めて困難なクライミングに加えて、ザイルのたぐり寄せが容易ではなかったためである。ザイルのたぐり寄せは、ルートに沿って行われたわけではなく、振り子のようにザイルをとばしながら垂直に近い壁をたぐり寄せる作業を強いられたためである。
夜営箇所は傾いた転石の平棚で、座った状態での夜営。飲料水および雪はなく、氷河から汲み上げた水を使用。
8月1日は130m進んだ (実働9時間)。頂上部の塔の手前の極めて困難な区間 (説明 R18-R21 参照) がボトルネックとなった。木製くさびやシュラムブール・ピトンを使用した。区間内のほぼ全長にわたってザイルをたぐり寄せながらのクライミングを強いられた。
夜営箇所は比較的平坦ではあるものの細い尾根上であり、テントを張ることはできなかった。尾根上にはちっぽけな雪渕があり、これは実にありがたかった。『столб』の岩壁は傾斜がきつく、どこにも雪はなかった。一般的に、平棚と呼べる箇所はほとんどなく、あったとしても雪を発見することはできなかった。
8月2日。『столб』頂上部の塔を螺旋状に迂回するルートは、長さ100m以上にわたるひび割れを進むもので、非常に大変だった (写真参照)。このひび割れは、ルートを下から眺めた段階で、当グループが唯一の通過可能箇所と判断していたものだった。6時間作業してもなお、ザイルをたぐり寄せる作業に非常に手間取った — 毎回のように、ザイルを右側に振り子のように飛ばしてから上方にたぐり寄せることを強いられ、西壁との間の尾根に到達した。西壁上部の様子は、困難なルートが予想されたため、ひとまず壁への加工にとどめることにした。尾根は細いが、座った状態での夜営には十分な幅があった。3時間作業して100m程を処理。クライミングは極めて困難を極めた。
8月3日。
- ペリカムに沿って進み、2つの急登をテクニカルにクリア。
- 目視では危なそうに見えていた、250mの脆い壁に到達。
- しかし実際は、下部100m程が一番まずく、非常に慎重なクライミングが求められた。
- この区間はひと息に登るわけにはいかず、生きた石が多数転がる急なプレート上でのクライミングとなる。
- 夜営地から (前日に処理した区間も含めて) 450mを8時間,実働8時間で。
- 夜営は傾いた転石の平棚。
8月4日。
- 西壁上部は、傾斜50°程度に緩くなり、ところどころそれ以上の急登が続く (区間別の説明参照)。
- 4時間で、稜線САГУ – Двузубка山 まで達した。標高にして150m。
- 稜線までは、はっきりとしたカンテ (岩稜) をたどるわけではないが、稜線に到達。
- 第一の頂 (зуб) への登攀は、高さ40mの岩壁で、クライミングにはピトンを使用。
- 第一と第二の頂の間の鞍部への下降はロープを使用。第二の頂への登攀は稜線伝いに、いくつか短い岩壁を越える。
- 稜線に到达してから頂上に至るまで2時間。
- 壁下の夜営地めがけて、Хамза峰 側に降下し、転石を下る。
以上より、作業時間として51時間を要したことになる (夜営地の設営時間は含まない)。西壁の高さは、垂直に測って1100m。以下に示す、各区間の高さは、斜距離ではなく、垂直距離である。詳細な説明では、区間ごとの距離について言及する。高さについては、傾斜度グラフを参照のこと。
このルートでは、以下のピトンを打ち込んだ (詳細な説明参照)。
-
クライミングおよび保険用に — 185本 (通常および溝型) (うち、130本が『столб』区間)、シュラムブール・ピトン18本、木製くさび10本。
-
セルフ・ピトンおよび、ザイルたぐり寄せポイント、夜営地設営用に — 41本。
合計254本。
登攀中、当グループはДугоба アルプホステルの参加者によるグループの観察を受けており、アルプホステルの救助チームとの迅速な連絡が可能だった。
ルートの難易度については、現在当グループのメンバーが経験済みの、他の5bルート (例:п. Узбекистан 北壁のエルチベコフルート、п. Вольная Испания の壁など) と比較して検討された。
グループとしては、このルートの困難さは以下3点に関して、
- テクニカル面での作業量
- 運動強度
- 心理的負荷
少なくとも第一区間 (『столб』区間) に関しては、従来の5bルートとは比較にならない、と判断している。すなわち、このルート — Двузубка山 の『столб』と西壁 — は、技術カテゴリー第6級に分類されるべきである、というのが当グループの見解である。
説明文:Ю. А. Логачёв
区間別のルート説明
Дугоба アルプホステル から、Дугоба河 沿いのトレイルをたどり、『второе слияние』 (現地略図参照) まで進む。次いで、左手の Ак-Таш河 側に渡河して каньон およびさらにその奥の каньон を通り抜け、ледник Урталик に至る。氷河の左のранклюву沿いに進み、『столб』直下の夜営地に至る。アルプホステルから7時間程。この日は、ルートの最初の加工を行う。
R1
ルートは『столб』下部から始まる。左手の ледовый кулуар を30m、ひび割れの右の平棚まで進む。平棚上にтурあり。平棚の真上は5mの垂直壁で、右側から登攀し、20m程のなだらかな尾根に至る (3級、以下グレードは特に記載のない限り、クライミンググレードを指す)。尾根はプレート地形に変わる。
R2
プレートの傾斜は60-70°で、内角を形成している。長さ15m、4ピトン使用。プレートは (赤茶けた岩が露出している) カルニス下に続く。
R3
カルニス下で、右斜め上にプレートを6m進む。小さな足場があるのみで3ピトン使用。赤茶けた内角の、カルニスの端に到達。左側の壁はほとんど手がかりがなく、張り出している。ピトンを追加の手がかりとして使用し、クライミングはハード極まる — 特に、内角から壁への移動が大変。ここで4-5m、4ピトン使用。その後、やや脆くなっているとはいえ張り出した壁の間を縫うように、3ピトン使用。
R4
壁を上り (生きた石に注意!) 、三角形の赤茶けた壁に到達 (15m)。壁の左側は、(最初のプレートは白い) なめらかなプレートが続く。プレートを10m、60°で登り、5ピトン使用。壁はプレート伝いに回避する。
R5
プレートは、転石のある平坦地に続く — そこからさらに、2本の黄を横切って右斜め上へ30m。クライミングは平均よりやや上、2ピトン使用、うち1本は溝型ピトン。強く傾斜した平坦地に到達 — 頂部にтурあり。
R6
この平坦地は、右側が『столб』右壁の上の細い平棚に続いている。この平棚は壁の屈曲部にさしかかると、左にカーブする。カーブしてすぐの箇所から、左斜め上にプレートを10m、4ピトン使用。次いで、90°の内角を6m、ピトンを4本使用して登攀し、1×2m² 程度のプレートに到達。プレートの傾斜は50°。ひび割れは細かく、ピトンを打ち込む箇所によっては、ピトンを2本使ってクライミングすることもある。4ピトン使用。
R7
プレートから先は、張り出した鈍角の内角となる。長さ10m、手がかりは小さく、あまり使い勝手がよくない。5ピトン使用。クライミングはハード極まる。この地点までは、ルートが事前に加工済みだった。
XXX
ペリカムに沿って進み、困難な箇所ではザイルをたぐり寄せながら進む (ルートは完全に垂直ではなく、R3やR7の区間では壁から強く離されるため)。
R8
鈍角の内角の先は、強く傾いた細い岩煙突となる。長さ7-8m、6ピトン使用、梯子使用。煙突左側の壁は、右側に倒れ込むようになっている。ザイルは『столб』右壁の垂直壁沿いにたぐり寄せることになる。
R9
煙突は、煙突とも黄ともとれるような地形に続く — 2段あり、合計20m。ピトンは時として2本打ちすることもある。黄の深いところは岩質が脆いためである。黄は、角にできた1×1.5m² の灰色のプレートに続く。
R10
ここから、200mの垂直壁上の、右斜め上方向の傾いた (70°) プレートを5m進む。プレートには手がかりとなるひび割れがある。3ピトン使用、ピトンは手がかり代わりにもなる。
R11
ここでザイルのたぐり寄せを行う (2ピトン使用)。作業は非常にやりづらく、1名分のスペースしかないためである。もう1名は、右壁上15-20cmの小さな平棚に立つのがやっと。右壁を上り、垂直壁を15m、90°、4ピトン使用。次いで、垂直なひび割れを経て黄に至り、草が生えている窪地に到達 (20m、3ピトン使用、2本の木製くさび使用)。
R12
右に2m進み、さらに4m上る — 張り出した壁で、手がかりは逆方向に曲がっている。3本の лепестковый крюк 使用。壁は垂直壁に続く — 10m、さらに2m上って小さな平棚に至る。シュラムブール・ピトン5本、通常ピトン3本使用。
R13
右斜め方向に小トレバーして、赤い壁の手前の平坦地めがけて進む — シュラムブール・ピトン4本、通常ピトン2本使用。
R14
急な内角を20m、5ピトン使用、2本の木製くさび使用。傾いた平坦地に到達。座った状態での夜営が可能。コントロール・ピトンあり。
R15
平坦地から、左方向の水平なひび割れ (幅0.7-1m、深さ10m) に進む。ひび割れ上部は、張り出した左壁に沿ってスパーラで進む。
R16
垂直壁を5m、2ピトン使用。次いで、傾いた内角を10m、3ピトン使用。壁はなめらか。
R17
左斜め方向に、70°の傾斜の壁上の平棚を15m、4ピトン使用。その後、上方向に40m、『столб』頂上部の塔に至る。クライミングは非常に困難を極めるが、手がかりとなるひび割れが区間内に多数あるため、何とかなる。9ピトン使用。
R18
頂上部の塔は、左から螺線状に迂回して登攀する。まずは左斜め方向の内角に4m、1ピトン使用。次いで、10mの赤茶けた垂直の内角 — 上部は岩の栓でふさがれている — 3ピトン使用。
R19
栓の上にザイルをたぐり寄せつつ梯子を使用して進み (2ピトン使用)、さらに10m程のなめらかな壁を上る — 3本のシュラムブール・ピトン、通常ピトン3本使用。斜めのひび割れに至る。
R20
ひび割れは左斜め上に続く。右側は傾いたカルニスとなっており、左側に強く張り出している。ペリカムがあっても、ザイルをたぐり寄せながらのクライミングは不可能。傾斜は70-90°、ひび割れはなく、手がかりもなめらか。クライミングの唯一の頼りは、右側の岩塊をひび割れに押し込んで固定すること。幅の広い木製くさびが使えることもある。ひび割れが広くなっている箇所では、広がりに合わせて足場を確保することで、シュラムブール・ピトンを使っての保険が可能となる。区間の長さは25m、木製くさび2本、溝型ピトン1本、シュラムブール・ピトン2本使用。
R21
『столб』頂上部の塔下に、傾いた内角を8-10m、2ピトン使用。栓の上でザイルを張り替えてたぐり寄せる。移動距離は60m程。『столб』頂上部の塔上の尾根上に — コントロール・ピトンあり。
R22
塔は右側から登攀する。右方向に平棚を15m、2ピトン使用。その後、平棚は傾いたひび割れに変わり、這うようにして10m程進む。
R23
細い、かつ下部が張り出した煙突を10-12m、3ピトン使用。
R24
急な、斜めのひび割れ — 上部はカルニスでふさがれている。傾斜 (というか、垂直壁の傾き) は60-80° — すなわち、場所によっては煙突状になる。『столб』頂上までの長さは100m。18ピトン使用、5本の木製くさび使用。ザイルのたぐり寄せが最大の問題となった — 右側40m程の位置にザイルを振り子のように飛ばしてから、垂直にたぐり寄せる必要があるため。次にたぐり寄せるザイルのためのロープをあらかじめ通しておくのも手間取るが、狭い区間にザイルをたぐり寄せながらのクライミングは手に負えない。
R25
『столб』頂上 — 夜営地 (快適な、座った状態で)。夜営地から40mの細い尾根が続き、急な尾根に至る。まずはプレートを30m、70°、6ピトン使用。次いで、張り出した内角を4m、2ピトン使用 (下から人が入って補助)。急な尾根に到達 — 5m、1ピトン使用。
R26
比較的なだらかな尾根が10-15m続いた後、壁の急登となる — 40m、60-70°、9ピトン使用。R25のカルニスを、さらに左側に大きく迂回しようとしたものの、うまくいかなかった。
R27
ザイルをたぐり寄せたのち、左壁沿いに次の急登に至る — 50m程。右側から登攀を開始し、上部でカミンに至る — 7ピトン使用。
R28
平均的な難易度の岩壁 (45°) が60m続き、脆い壁に至る。短い壁2箇所に2ピトン使用。
R29
脆い壁が250m続く。まずは黄を100m、傾斜は初め40°、終盤80°、8ピトン使用。その後、15mの垂直な煙突。さらに上は、50°のプレートおよびブロック上の40mの壁。左側から登攀し、クライミングはハード。さらに、右側に大きくトレバー — 60°、80m、7ピトン使用。この区間は落石のおそれあり!!!
R30
2.5本分のザイルの長さで、氷で覆われた斜めの黄に至る。アプローチは、垂直壁上の細い平棚沿いに進み、右側沿いに30m、3ピトン使用。
R31
黄から上は、40mのプレート。
R32
Dвузубка山 方向への急登 — 60°、30m、2ピトン使用。その後 Dвузубка山 までの尾根が続く。
R33
尾根上には、5-10mの窪みがいくつかある。
R34
第一の頂 (зуб) への登攀は、高さ40mの壁で、上部に段差あり。鞍部への下降はロープ使用。鞍部から第二の頂 (зуб) へは壁を15m。合計6ピトン使用。
Хамза峰 方向に降下して、壁下の夜営地に至る。
各区間の所要時間、およびテクニカルな作業量については、前述の総評を参照のこと。
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